春になると、日本中どこへ行っても咲いているのが、桜。
会社の仲間や家族みんなで、花見に出かける人も多いでしょう。
そんなときに、誰かが調子に乗って桜の枝を折るなんてハプニングが起こりませんか?
誰でも「桜の枝を折るのはヤバいのでは?」っていう意識はあっても、「なぜダメなのか?」まではくわしく知らないはず。
アメリカのワシントン元大統領のエピソードもうろ覚えでしょうし……。
そこで、ここでは
- 桜の枝を折るのが許されない理由(罪・罰則)
- 折れた桜の枝や花を持ち帰るのもダメなの?
- 「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」の言葉の意味
こんな桜の枝にまつわる疑問や知識を集めてみました。
桜の枝を折る(切る)のが許されない2つの理由
まず、桜の枝を折るのがダメなのは本当です。
どんな事情があっても絶対に折ってはいけません!
その理由は、以下の2つから。
- 桜の木は腐りやすいから
- 法的に罰則が定められているから
つまり、桜の木を大切にする理由と、法的に許されず違法だからという二重の意味でダメなことなんですね。
【理由1】桜の木は腐りやすいから
桜の枝を折ると、そこから「木材腐朽菌」という木を腐らす菌が侵入するため、枝や幹を腐らせる原因になってしまうんです。
桜は他の木に比べて、枝を切った痕(剪定痕)を保護するチカラが弱く、切り口がなかなか埋まりません。
そのため、そこから木材腐朽菌が入りやすいわけです。
ですから、何も考えないで勝手に枝をポキっと折ってしまう行為がいかに愚かで、桜にダメージを与えることになるかは容易に想像がつくでしょう。
ソメイヨシノは特別に弱い品種
いま日本中で最も多く植えられているのが、ソメイヨシノ。
「公園の桜の枝を折った」なんて場合は、ほぼ100%それはソメイヨシノの枝のこと。
このソメイヨシノは、他の桜と比べると非常に腐りやすい性質があります。
また、植えてから50年もすると成長がストップし、人間で言えば老人になるため、より病気にかかりやすくなります。
全国のソメイヨシノは、一本の木から作られたクローンであることは有名ですね。
それゆえに、すべての桜の木(ソメイヨシノ)が等しく同じ性質を持っています。
この木は太くて丈夫そうだから、一本くらい枝を折っても平気だろう
なんて勝手な行動はせず、これから先、何十年も美しい花を見せてもらうために労ってあげたいですね。
桜の花を摘むのも木にダメージになる?
枝は折らず、ただ桜の花を摘むだけなら木に対してはダメージにはなりません。
ただ、ソメイヨシノの開花期間はせいぜい2週間程度。
特別に命が短い花ですし、あとから花見に来る人のことを考えて、花びらを摘むようなエゴイスティックな行動は慎みましょう。
もし桜の花びらが何枚か確かめたい場合でも折らないで、以下の記事で解説していますのでそちらでご確認ください。
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【理由2】法的に罰則が定められているから
桜の枝を折ってはいけない理由の2つめが、法的に罰則が定められているからです。
たかが枝を折るくらいだと軽く考えがちですが、違法な行為であることは間違いありません。
では、その罰則はどのようなものなんでしょうか?
桜の枝を折ると器物損壊罪
桜の枝を折った場合、「器物損壊罪」が適用されます。
器物損壊罪とは、他人の物を傷つけたり壊す犯罪のこと。
器物損壊罪の罰則は、3年以下の懲役、または30万円以下の罰金。
もしくは科料(1万円以下の金銭の納付を求める刑罰)が課せられます。
ただし、器物損壊罪は「親告罪」という種類の罪で、桜の木の所有者が告訴しない限り、罪に問われることはありません。
個人が所有する土地に植えられた桜なら、その所有者の告訴。
公園や川原などに植えられた桜なら、国や地方自治体が所有者に当たります。
ですから、桜の枝を折ったからといってすぐに逮捕されるようなことはありません。
もちろん、だからといって軽く考えず、法的には違法行為なんだという認識を強く持つべきですね。
折った桜の枝を持って帰ると窃盗罪
自分の意志で桜の枝を折る行為は、器物損壊罪に当たります。
さらに折った桜の枝を自宅に飾るために持って帰る行為は、「窃盗罪」に当たります。
窃盗罪の罰則は、10年以下の懲役、または50万円以下の罰金。
つまり「桜の枝を折って、持ち帰る」と、二重の罪を犯すことに……。
桜の花を摘むのは許される?
桜の枝を折るのはダメだって分かるけど、花くらいならいいでしょう?
と気軽な気持ちで花を摘む人はたくさんいらっしゃるはず。
しかし、桜の花を摘む行為も立派な器物損壊罪に当たります。
また、摘んだ桜の花を冠にしたり、押し花にするために自宅に持ち帰る行為は、窃盗罪に当たります。
あくまで桜の花は「鑑賞」するだけで我慢しましょう。
地面に落ちている桜の枝や花を持って帰るのは許される?
桜が満開に咲いている公園や川原の土手などには、無数の桜の花びらや、ときには風にあおられて折れた桜の枝が落ちています。
こんな不可抗力で地面に落ちている桜の枝や花でも、勝手に持ち帰る行為は窃盗罪に当たります。
ただ、咲いているときは美しい桜の花も、地面に落ちてしまえばゴミ同然。
個人宅でも公園でも所有者から「なにを勝手に持ち去ったんだ!」と告訴される可能性は非常に低いはず。
もちろん、だからといって、持ち去り行為を推奨する気はありませんが……。
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」の意味
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざを耳にしたことがあるでしょうか?
このことわざの意味は、こうです。
桜は枝を切ると、枯れたり花が咲かなくなる
だから桜を切る奴は馬鹿だ
梅は枝を切らないと、ムダな枝が増えて花が咲かなくなる
だから梅を切らない奴は馬鹿だ
昔から桜の枝を切ると腐ったりして枯れることは知られていたんですね。
逆に梅は枝を切らないと、翌年に花が咲かなくなり梅干しにする果実をつけないことも知られていました。
このことわざは転じて
それぞれの対象に合わせた適切な対処をしない愚
余計なことをして、肝心なことをしない愚
を表現するようにもなっています。
梅は折っても平気な理由
梅は桜と同じようにバラ科の植物ですが、性質はまったく違います。
梅は桜のように枝を折ったり切ったりしても、そこから腐朽菌が入って腐りやすくなったりはしません。
逆に枝を積極的に切らないでいると「徒長枝」というムダな枝が伸び放題になり、花を咲かせる大切な枝に日が当たらないようになります
その結果、梅の花の数が減り、実の付きが悪くなるんですね。
折れた桜の枝の利用方法
なんらかの理由で桜の枝が折れていて、その枝を「自由に持ち帰っていい」と所有者から許可されたという前提の話になります。
もし、許されて桜の枝を家に持ち帰った場合、花瓶に挿して楽しむだけではもったいありません!
その桜の枝を一本の桜に育てることも可能なんですよ。
ソメイヨシノの場合
植物にちょっとくわしい方なら「挿し木」の知識がお有りですね?
ざっと説明すると、挿し木とは植物の枝や葉などを土に植えることで増やす方法のこと。
一部の植物は枝を土に植えておくと、そこから根が伸びてきて土に根付き、そのまま成長していくんですね。
ソメイヨシノを挿し木で増やすのは難しいそうですが、不可能ではありません。
- まだ若くて青い枝であること
- 6月中に行うこと
- 清潔な新しい挿し木用の土を使うこと
- 発根促進剤を使う
以上のように成功させるには条件が厳しいですが、もし桜の枝が手に入ったならチャレンジしてみてもいいかもしれません。
ソメイヨシノ以外の桜の場合
ソメイヨシノ以外の桜も挿し木が可能です。
- 大島桜(オオシマザクラ)
- 枝垂れ桜(シダレザクラ)
- 河津桜(カワヅザクラ)
それぞれ花の魅力は違います。
こんな桜が家で楽しめたら最高ですね。
旭山桜を挿し木する動画がこちら。
お店で桜の枝が販売されている理由
春先になると花屋やホームセンターなどで、桜の花が付いた枝が売られているのを見かけませんか?
「桜の枝を折るのは桜の木にとって悪いこと」という知識がある人は、なんて無謀で乱暴なことをするんだと憤慨するでしょう。
しかし、きちんとしたルートで販売されている桜の枝は、プロが「適切な方法」で切っているため、桜の木にダメージはないんですね。
もちろん、その桜の木自体も業者が育てている所有物でしょうから、切る行為にも法的な問題は無し!
剪定バサミで切れるくらいの細い枝なら、後で切り口をケアしておけば、ほとんど問題ないそうです。
素人にはその見極めが難しいですが、専門家がプロの視点で見極めてカットした桜の枝が市場に出回っているのでご安心ください。
【インスタ向け】桜の枝と一緒に写真に写りたい場合の撮影方法
桜の枝や花をバックに写真を撮って、インスタに上げる女性は毎年たくさんいらっしゃいます。
でも、「インスタ映え」を意識して、桜の枝を折ったり、桜の花を摘むのはやってはいけない行為です。
顔の横に桜の枝を置きたい場合は、花屋で自腹で購入するのが方法のひとつ。
もうひとつ良い方法は、現在すでに有名な桜の名所に行くのではなく、ここ最近になって桜が植えられた場所へ行くこと。
桜の名所の樹齢がいった桜の巨木は背が高すぎます。
しかし、まだ若い木ならば背が低く、枝の位置が低いので顔の横に持ってくることは簡単です。
また、枝垂れ桜なら枝が下まで垂れているので、要望に叶うでしょう。
桜の写真を撮る時の注意点
写真を撮影する際は、桜の木の下の根本をなるべく踏まないようにしましょう。
根本の土をたくさんの人が踏んで固めてしまうと、桜の根が呼吸しにくくなります……。
すると、やがて衰弱し、枯れてしまうことも。
これからも末永く桜に元気でいてもらうために、適度な距離をとって楽しみたいですね。
桜の枝を折るのまとめ
なぜ桜の枝を折ってはいけないのか、長々とご紹介してきました。
あらためて、要点をまとめましょう。
- 桜の枝を折ると「木そのもの」を腐らすからダメ!
- 桜の枝を折ると器物損壊罪になるからダメ!
- 桜の枝や花を持ち去ると窃盗罪に当たる
私たちがあちこちで見かける桜の木は、個人だったり国や都道府県などの持ち物です。
ですから、勝手に枝を折ることは認められませんし、桜の木にとっても迷惑な話です。
美しさを独り占めしようとは考えず、共有財産なんだという意識を持って、離れて楽しみましょう。
ちなみにジョージ・ワシントンが父親が大切にしていた桜の木を切ってしまい、それを正直に告白したら「なんと正直なんだ」と称賛したエピソードは実話じゃないらしいです。