- あたたかく見守る
- あたたかくして寝る
- あたたかく迎える
これらは、日常的な会話や、なにげない文章で使う機会がある表現。
でも、いざ漢字に変換しようとすると、「暖かく」・「温かく」のどっちを使うのが正しいのか誰でも迷ってしまいますよね?
普段から文章を書き慣れている私なので、使い分けは完璧ですが、世間の大半の人は曖昧な認識しかないはず
そこでここでは
- 「暖かく」と「温かく」の正しい使い分け
- 「暖かく」と「温かく」の違い
- 「暖かく」と「温かく」の漢字の意味や由来
といった点をわかりやすく解説していきましょう。
「暖かく」と「温かく」の使い分け実例集
まず違いうんぬんの前に「こういうときはどっちを使えばいいのか?」、その使い分け方を実例を挙げてご紹介します。
「見守る」は暖かく?温かく?
「見守る」は「温かく」が正解です。
「寝る」は暖かくして?温かくして?
「寝る」は主語によって「暖かく」・「温かく」のどちらかを使い分けるのが正解です。
例文:風邪を引かないよう体を温かくして寝る
つまり、部屋の空気の温度を上げて、あたたかい状態にして寝る場合は「暖かく」。
一方、毛布や湯たんぽなどで体が冷えるのを防いで寝るときは「温かく」が正解なんですね。
「迎える」は暖かく?温かく?
「迎える」は「温かく」が正解です。
「お過ごしください」は暖かく?温かく?
「お過ごしください」は「暖かく」が正解です。
「体」は暖かく?温かく?
「体」は使い方(文脈)によって「暖かく」と「温かく」を使い分ける必要があります。
例文:北風が強いので体を温かくする服装が必要だ
大気の温度が高くて体がポカポカするときは「暖かく」。
一方、大気の寒さから体が冷えるのを防ぐときは「温かく」が正解です。
「接する」は暖かく?温かく?
「接する」は「温かく」が正解です。
「懐」は暖かく?温かく?
「懐」は「暖かく」が正解です。
「色」は暖かく?温かく?
「色」は「暖かく」が正解です。
「食べ物」は暖かく?温かく?
「食べ物」は「温かく」が正解です。
「もてなす」は暖かく?温かく?
「もてなす」は「温かく」が正解です。
「風」は暖かく?温かく?
「風」は種類によって「暖かく」と「温かく」を使い分けます。
例文:エアコンからの風は温かく感じる
非常に例外的な使い分けですが、自然の風は「暖かく」で、人工的な風は「温かく」になります。
暖房機は「暖」の字を使うものの、「温風ヒーター」など風の場合だけは温かいが使われていますものね。
「人・人柄」は暖かく?温かく?
「人」や「人柄」は「温かく」が正解です。
例文:人柄が温かく感じられた
「言葉」は暖かく?温かく?
「言葉」は「温かい」が正解です。(「暖かい」でも良いとする意見もあります)
「服」は暖かく?温かく?
「服」は「暖かく」が正解です。
服は全身を暖めるので「暖」が適していると思いますが、体の一部分しかあたまらない手袋や靴下も暖かいが使われるので、そのあたりは曖昧ですね……。
「気持ち」は暖かく?温かく?
「気持ち」は「温かく」が正解です。
「暖かく」と「温かく」の違い
「暖かく」と「温かく」の違いを簡単に言うと、以下のようになります。
- 気温や気候など体全体で感じるものは「暖かく」
- 体の一部や心で感じるものは「温かく」
この基準で使い分けされるということです。
この分け方でざっくりとした違いは理解できると思いますが、一部では例外的なものもあるので、くわしく分けて見ていきましょう。
「暖かく」が正しい場合
では、まず「暖かく」の「暖」という漢字の意味から、使われる場面やその特徴をチェックしていきましょう。
「暖」の漢字の意味
「暖」という漢字は、「日」と「爰」が合わさってできました。
「日」は「太陽」を意味し、「爰」は「渡る」という意味があります。
ですから、2つが組み合わさると「日(太陽)が渡る」という意味になり、太陽に照らされた暖かさを表現しているんですね。
よって、主に気温・季節・気候など太陽に影響される大気の暖かさを表現するときに用いられます。
周囲の空気を体全体で感じるときは「暖かく」
天気がよくて暖かい日、暖房をつけて暖かい部屋など、人間を取り巻く「空気」が寒くなく適温の場合に使うのが「暖かく」。
それも手の先など体の一部分ではなく、体全体で暖かさを感じるときには、こちらの漢字を使うのが適切です。
色は暖色と書くので「暖かく」
赤・オレンジ・黄色といった系統の色は「暖色」と呼ばれるので、色のあたたかみを表現する場合は「暖かく」が使われます。
こうした暖色からは、太陽や火をイメージし、心や体の一部ではなく、体全体がフィジカルに暖かくなる印象があるからなんだと推測されます。
「懐が暖かくなる」は例外的な表現
もうひとつ例外的な表現として「懐が暖かくなる」があります。
「懐が暖かい」とは、お金をたくさん持っている状態を指しますが、それでフィジカルに体全体があたたまるわけではありません。
かといって、お金がたくさん入った財布が物理的に温まるわけでもありません。
ですから、どちらもしっくりこないわけですが、おそらく「懐が寒い」という表現が先にあって、それに対しての表現なので「暖かい」が使われるようになったのではないかと思います。
「温かく」が正しい場合
次に「温かく」の「温」の感じの意味から、使われる場面と特徴をチェックしましょう。
「温」の漢字の意味
「温」の元々の漢字は「溫」でした。
溫は「流れる水」と「皿の上のあたたかな煮物」を表した漢字。
ですから「暖かい」とは対象的に、モノの温かい/冷たいを表現するときに用いられます。
体の一部分が触れるときは「温かく」
体全体ではなく体の一部分(手や足先、舌など)が何かに触れて感じるあたたかさを「温かく」と表現します。
- 冬にストーブに手をかざして、手が温かくなる
- 足湯に入って足先が温かくなる
などがその典型的な例になります。
モノが持つ温度は「温かく」
ホットコーヒーや温泉など人工物や自然物モノが持つ温度は、「温かく」が使われます。
温泉に入ると全身が温まりますが、温泉は字の通り「温かい泉」であり、けっして「暖かい泉」とは呼びませんよね?
基本的に「温度」で表すあたたかさは、すべて「温かく」が使われると思っていいでしょう。
心で感じるあたたかさは「温かく」
「温情(思いやりがあって優しい心)」という言葉があるように、心で感じるあたたかさは「温かく」の字を使って表現します。
ほかにも「温もり」・「温厚」といった言葉からも想像できるように、「温かく迎える」など心の温度を表現するときはやはりこちらの字がピッタリです。
「暖かく」と「温かく」で迷ったら反対語で判断
上記で挙げた例以外で、「暖かく」と「温かく」のどちらを使ったらいいか迷ったら、いい判断方法があります。
それが「反対語を想像してみる」こと。
反対語とは、たとえば「手」の場合、手が「温かい/暖かい」の反対語は、「手が冷たい/寒い」になります。
想像してみた結果、どちらがしっくりくるか?それで判断します。
手の場合、「手が寒い」では変ですから、「手が冷たい」の反対語である「手が温かい」が正解だと分かるわけですね。
以下にいくつか例を出してみたので、今後の参考になさってください。
例題 | 暖かいの反対語 | 温かいの反対語 | 正解 |
手 | 手が寒い | 手が冷たい | 手が温かい |
家庭 | 寒い家庭 | 冷たい家庭 | 温かい家庭 |
料理 | 寒い料理 | 冷たい料理 | 温かい料理 |
朝 | 寒い朝 | 冷たい朝 | 暖かい朝 |
まとめ
「暖かく」と「温かく」の使い分け方をご紹介してきました。
最後にポイントをまとめます。
- 体全体で感じるあたたかさは「暖かく」
- 体の一部で感じるあたたかさは「温かく」
- 気候のあたたかさは「暖かく」
- モノが持つあたたかさは「温かく」
- 色と懐は「暖かく」
- 心で感じるあたたかさは「温かく」
- 迷ったら反対語をイメージすると判断しやすい
それでもどっちか迷ったら、「○○ 温かい 暖かい」のキーワードでGoogle検索すると、正しい方の検索結果へ導かれるので分かりますよ。
ぜひお試しください。