「しずらい」・「しづらい」のうち、正しい表記は「しづらい」です。
この記事を読めば分かること
- しずらい・しづらい、どっちが正解?
- しずらい・しづらいの違い
- しづらいの正しい使い方
間違えている人が多い「しずらい・しづらい」誤用問題について、全般的な知識をすべてまとめています。
「しずらい・しづらい」はどっちの表記が正しい?
「しづらい」です。
たとえば、このような
- 読みづらい/読みずらい
- 登りづらい/登りずらい
- 押しづらい/押しずらい
- 暮らしづらい/暮らしずらい
- 我慢しづらい/我慢しずらい
- 反応しづらい/反応しずらい
これらの「しずらい/しづらい」は、すべて「しづらい」が正しい表記です。
「しずらい」は誤用
「しずらい・しづらい」を漢字を書くと、「し辛い」になります。
漢字表記の「し辛い」を平仮名にすると、「しづらい」になります。
つまり「辛い/つらい」の「つ」を濁音にした「づ」が「しづらい」の「づ」なんですね。
漢字の表記が平仮名になっているために、「しずらい」or「しづらい」で迷ってしまう原因に……。
あらためて漢字で表記すると、「しづらい」が正しいと誰もが一目瞭然でしょう。
「する」+「つらい」からできた言葉
「しづらい」は、「する」と「つらい」が組み合わさって出来た言葉です。
- 「する」:動詞の連用形
- 「つらい」:接尾語
つまり、意味としては「~するのがつらい」となります。
これらの事実から考えれば、「しずらい」が誤用なのがよくお分かりいただけると思います。
「しずらい・しづらい」はNHKではどっちを使う?
もちろん、NHKでも正しい表記の「しづらい」を使います。
これは新聞や雑誌等の出版物でも一緒です。
なぜネット上では「しずらい」の誤用が多い?
新聞や雑誌などプロの校正者がいないブログやメールの文章では、「しずらい」と誤用するケースが目立ちます。
誤用の原因は、なんといってもどちらも「声に出したときに同じ音」だから。
「しづらい」の元の意味までたどらない限り、間違っていると気づきにくでしょう。
現代仮名遣いの影響
また、現代仮名遣い(仮名遣いのルール集)では、「ず」を本則として、例外的に「づ」を使うと決められた影響も大きいのかもしれません。
他にも「ぢ」と「じ」の使い分けも同様のケースです。
「地獄」や「地震」など本来は「ぢ」が正しい表記なのに、こちらは「じごく」・「じしん」と「じ」の表記が当たり前になっています。
このように「ぢ」や「づ」は現在では用いられることが減っています。
しかし、現代仮名遣いのルール上では
- 【複合語】:鼻血(はなぢ)・三日月(みかづき)等
- 【連濁】:続く(つづく)・縮む(ちぢむ)等
この複合語と連濁の言葉には「づ」と「ぢ」が引き続き使われると決められました。
「しづらい」も「する」+「つらい」の複合語なので、「づ」を使うのが正解というわけですね。
※複合語とは、本来は別々の単語が2つ以上結合して、ひとつの意味を持った単語。※連濁とは、清音の言葉が発音の都合上、濁音になるもの。
「しづらい」の正しい使い方
普段なにげなく使っている「しづらい」。
ここであらためて意味を頭に入れて、正しい使い方をマスターしましょう。
「しづらい」の意味は「実行が困難・抵抗がある」
「しずらい」の意味を辞書で調べると以下の通りです。
実行が困難である、あるいは、行うには抵抗がある、という意味の表現。「しづらい」(し辛い)から変じた表記。
たとえば
- 雪が降った道路は滑りやすくて歩きづらい
- 打線が強力でやりづらいチーム
など、「行動」が困難だったり、「心理的」に抵抗感を感じる場合に使うのが正しいとされます。
「しにくい」との違い
「しづらい」と似た表現に「しにくい」があります。
「しにくい」を辞書で引くと、こう説明されています。
することがむずかしい。うまくすることができない。やりにくい。「当事者の前では話が—・い」
意味的には「しづらい」とほとんど一緒です。
ただ、たとえば
- 見えづらい(個人的な事情で見えない)
- 見えにくい(客観的な理由で見えない)
このように微妙にニュアンスが違うという意見も。
「スカイツリーが見えづらい」は、自分の視力の低下で見えづらい、これが「見えにくい」の場合は場所的に遠すぎて見えにくいという意味になるわけですね。
なお、歴史的には「しにくい」のほうが古く、「しづらい」は後になってから登場しました。
し難い(しがたい)との違い
「し難い」の「しづらい」と似た表現です。
「し難い」を辞書で引くと、こう説明があります。
動詞に続き、それを行うことが容易でないことを示す表現。実行が困難である、あるいは、承服しかねる、といった意味合いで主に用いられる。
ニュアンス的には「しづらい」よりも、より実行が困難なケースにピッタリくる表現ですね。
「しづらい」は無理をすればなんとかなりそうですが、「し難い」だと「ほとんど無理」だと暗に認めているようなものです。
「しずらい・しづらい」の言い換え集
「しずらい・しづらい」(正確には「しづらい」)を使いたくない場合、どんな言い換え方があるのか、具体例をご紹介します。
- しにくい
- 難航
- 困難
- 難産
- 難しい
要するに「実行するのが簡単じゃない」という意味の言葉を使えばいいわけです。
「しずらい・しづらい」の違いまとめ
- 「しづらい」が正しい書き方
- 「しずらい」は誤用
- 漢字では「し辛い」(しづらい)と書くため
- 「する」+「つらい」から生まれた言葉
パソコンやスマホで「しづらい」を変換すると、「し辛い」が候補になることからも明らかですね。
誤用している人も多いため、間違っても相手から指摘されて恥をかくことはまずないでしょう。
しかし、一定以上の教養のある人(特に文系)に「しずらい」と書くと、己の無知を晒すようなものですからお気をつけください。