魚へんに冬の読み方は「コノシロ」です。
この記事を読めば分かること
- 魚へんに冬と書いて何と読む?
- 鮗(コノシロ)ってどんな魚?
- 「冬」の漢字を使う理由
鮗の読み方から、名前の由来、どんな魚なのかまで、すべてひっくるめてご紹介します。
魚へんに冬と書いて何と読む?
魚へんに冬は「コノシロ」です。
コノシロは日本を含む、東アジアに生息するニシン目ニシン科の海水魚。
コハダやシンコの別名だといえば、「ああ、あの魚か!」と納得されるのではないでしょうか。
「光り物」と呼ばれる魚のひとつで、寿司ネタとして日本人には馴染み深い食材です。
鮗(コノシロ)ってどんな魚?
鮗(コノシロ)とはどんな魚なのか、知っておいて損のない豆知識をご紹介しましょう。
ブリと同じ出世魚(しゅっせうお)
鮗(コノシロ)は鰤(ブリ)と同じように出世魚です。
出世魚とは、成長過程に合わせて名前が変わるタイプの魚のことですね。
鮗(コノシロ)のそれぞれの成長段階の呼び方は、多くの地域で大きさに合わせて以下のように呼ばれます。
- シンコ(4~8cmまで)
- コハダ(10cm程度)
- ナカズミ(13cm程度)
- コノシロ(15cm以上)
寿司ネタのコハダが最も成長した姿がコノシロになるんですね。
余談ですが、いくつかの地方では4~8cmまでの若魚を以下のように呼びます。
- 関西:ツナシ
- 佐賀県:ハビロ
- 高知県:ドロクイ/ジャコ
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「コノシロ」という名前の3つの由来
コノシロという不思議な響きの名前が付いたのは、以下の3つの由来があります。
- 飯の代わりになる魚(だったから
- 子供の身代わりにしたから
- 赤ちゃんの身代わりにしたから
どれが正しいのかは不明ですが、すべて興味深いエピソードがあるのでご覧ください。
飯の代わりにする魚(飯代魚)だったから
コノシロは昔から大量に獲れたそうで、庶民のお腹を満たしてきました。
そんな豊漁の様子を大げさに「飯の代わりにする魚」だと表現していたそうです。
そこから「飯代魚(このしろ)」という名前が付いたという説。
子供の身代わり(子の代)にしたから
昔の人は、コノシロを焼いた匂いは「人の死体を焼く臭い」と似ていると感じていたそうです。
そんなコノシロの特性を活かして、大ピンチを切り抜けたエピソードが伝えられています。
昔々、下野国の長者に美しい一人娘がいました。
その美しさに惚れた常陸国の国司(偉い人)が嫁に欲しいと言ってきました。
偉い人の要求なので普通は断れませんが、娘には恋人がいて、すでに妊娠中です。
そこで娘の親は国司の使いがやってきたときに、「娘は病死した」と偽り、コノシロを棺に詰め火葬して見せました。
コノシロを焼く臭いを死体を焼く臭いと勘違いした国司の使者は、「それなら仕方ない」と納得して帰っていきました。
このエピソードから「子の身代わり」=「子の代」と書き、コノシロという名前になったという説。
赤ちゃんの身代わりにしたから
昔は生まれた赤ん坊の健康を祈って、コノシロを地中に埋める風習がありました。
幼い子供の身代わりになってもらう魚という意味から、児(こ)の代(コノシロ)の名前が付いた説。
コノシロの名は武士には嫌われていた
「コノシロを焼く」と誰かが口で言ったら、「この城を焼く」とも聞こえますよね?
そこから縁起を気にする江戸時代の武士には、コノシロの名前は忌み嫌われていました。
もちろん、焼いて食べる調理方法は敬遠されていたそうです。
コノシロが「魚へんに冬」と書く2つの理由
コノシロが「魚へんに冬」と書く理由は、以下の2つが考えられます。
- 旬が冬で漁獲量が増えるから
- 中国の漢字表記と混同を避けるため
旬が冬で漁獲量が増えるから
コノシロの旬は11月~2月の冬の時期です。
コノシロは成長段階で旬が変わり、各段階の旬は以下の通り。
- シンコ:7~8月
- コハダ:8~9月
- ナカズミ:9~10月
- コノシロ:11~2月
11~2月にかけては脂が乗って美味しく、当然ながら漁獲量が増えるので「冬の魚」と書くのは納得のいくところでしょう。
中国の漢字表記と混同を避けるため
中国でコノシロは「鰶」(魚へんに祭)と書きます。
その漢字を日本にそのまま輸入しても良かったのですが、ひとつ問題が。
その頃、日本では「鰶」(魚へんに祭)を「サンマ」と読んでいたんですね。
2つの別の魚が1つの漢字でバッティングしてしまうため、解決案として「冬」の字を当てたと言われています。
「鮗」という漢字について
漢字 | 鮗 |
訓読み | コノシロ |
音読み | 無し |
画数 | 16画 |
部首 | うお・うおへん・さかなへん |
種別 | 国字 |
鮗は日本独自の漢字(国字)であり、中国にはありません。
コノシロは鮗以外の漢字表記もある
コノシロと読む漢字は鮗以外にも、以下の3つがあります。
- 魚へんに祭で「鰶」
- 魚へんに庸で「鱅」
- 魚へんに制で「鯯」
「祭」の字が付くのは、コノシロが祭りのお供え物や、秋祭りの「鮓(すし)」の材料に使われたのが由来です。
「庸」の字が付くのは、コノシロを焼くと死体を焼いたときに似た臭いがするためです。
コノシロの食べ方
酢じめにしたコハダやシンコは寿司ネタの定番ですが、通常コノシロは鮨には使われません。
コノシロの食べ方は
- 塩焼き
- 唐揚げ
などが一般的です。
ただ、コノシロは成長するほど味が悪くなるため、成長段階の最初(シンコ~コハダ)で食べられることがほとんど。
そのため成長しきった段階のコノシロは多くは流通しません。
まとめ
- 魚へんに冬はコノシロと読む
- 出世魚で別名は寿司ネタのコハダやシンコ
- 名前の由来は冬が旬&中国名「鰶」とかぶるのを防ぐため
コノシロは成長するほど味が落ちる逆出世魚なので、誰もが知るコハダという呼び方よりも知名度は低いのが現実です。
市場価値もシンコ⇒コハダ⇒ナカズミ⇒コノシロの順に下がってしまうとか……。
なかなかお目にかかれないですが、一度くらいは塩焼きで食べてみたいものですね。