この間、文章を書いているとき「自動車を駐車場にとめる」の「とめる」は、どの漢字を使えばいいのか分からなくて手が止まりました。
自転車を「駐輪場にとめる」のも同様に迷いますよね。
候補としては「止める」・「停める」・「駐める」の3つ。
果たしてどれが正しいのか、国語や現代文が苦手だった私には正解が想像できない難問題です。
正式な文章で単純な漢字の間違えは絶対に許されないので、現代文の成績が良かった知人にメールでヘルプを要請。
そのおかげで以下の事実が判明しました。
- 止める・停める・駐めるの使い分け方
- 駐車場にとめるはどれが正解か?
正しい国語の用法において、どのように区別されているのか解説します。
漢字で車を「止める」の使い方
「止める」は自動車を運転している最中、信号が赤に変わったので車を「止める」ときに使う言葉です。
また、路上を流すタクシーに乗りたいに、さっと手を上げて「止める」ときにも使います。
道路標識に「止マレ」と書かれているのを思い出すと分かりやすいはず。
つまり、運転者が自らの車をストップさせるときや、第三者が走ってきた車を止める際の両方に使うわけです。
【「止める」を使う場面】
- 赤信号に変わったので車を止めるとき
- タクシーを止めるとき
- 道路を渡る際、走行する自動車を止めるとき
漢字で車を「駐める」の使い方
「駐める」は車両が長時間(継続的に)停止する際に使う言葉です。
「駐車場」という漢字を使うことからイメージできますね。
スーパーや銀行などの駐車場に車をとめるとき「駐める」と書きます。
【「駐める」を使う場面】
- 駐車場に駐めるとき(運転者が車から離れる)
- 自動車が故障して路肩に駐めるとき
漢字で車を「停める」の使い方
「停める」は短時間だけ自動車を停める際に使う言葉です。
「一時的な駐車」という言い方が正確かもしれません。
バス停(バスの停留所)という漢字を使うところからイメージしやすいでしょう。
【「停める」を使う場面】
- 車に乗り降りするために停めるとき
- バス停でバスが停まるとき
- トラックなど荷物の上げ下ろしで停めるとき
漢字で車を「留める」と「泊める」の使い方
なお、もうひとつの「とめる」として使われる「留める」は、何かをその場から動かないように固定する際に使う言葉です。
「留学」のように勉強のため外国に留まる際にピッタリくる言葉ですね。
ですから普通は「車を留める」という使い方はしません。
【漢字の「留める」を使う場面】
- 鳥が枝に留まる
- ポスターを画鋲で留める
- ヘアピンで髪を留める
また、「泊める」という漢字もありますが、これは「ホテルに泊まる」という使い方が正しいので、「車を泊める」というのは用法的に間違いです。
車中泊が流行っていますが、この場合、「泊める」主体は車ではなく「人」になりますから。
車を「止める・停める・駐める」を辞書で調べたら?
正式な意味を知ろうとネット辞書で「とめる」を調べてみたんですが、「止める」も「停める」も同じ項目に一緒にされていたんですよ。
と・める【止める/留める/▽停める】 の意味
1 動いているものを動かないようにする。「タクシーを―・める」「文章を書く手を―・める」
2 継続しているものを続かなくさせる。とだえさせる。「息を―・める」「痛みを―・める」
3 固定して離れないようにする。「紙をピンで―・める」「背広のボタンを―・める」
4 やめさせる。制止する。「けんかを―・める」
5 関心を向ける。注意する。「心を―・めて聞く」「ふとテレビに目を―・める」
6 その場にとどめ置く。「取り調べのため警察に―・める」
7 やめる。
8 あとに残す。
出典:goo辞書
つまり「止める」も「停める」も漢字としての意味的には全く一緒の扱いなんですね。
「駐める」は辞書に載っていなかった!
では三番目の漢字候補である「駐める」は意味的にどうなのでしょうか?
これもネット辞書で調べてみたんですが、いくら検索しても「駐める」の項目は見つかりません・・・・。
それで自動的に先ほどの「と・める【止める/留める/▽停める】 の意味」のページに飛ばされてしまいます。
辞書で見つからないということは、この「駐める」は正式な使い方ではなく当て字の一種のようですね。
現にこの「と・める【止める/留める/▽停める】 の意味」のページには補足として、以下のような文章が付け加えてありました。
[補説]俗に、「駐める」と書いて駐車の意とし、「停める」を停車の意として使い分けることがある。
出典:goo辞書
「俗に」とあるように「駐める」は駐車という言葉から作り出された造語であり、一般的に浸透しているものの、
まだ辞書に正式な意味として採用されるまえの段階
と理解するのが正しいでしょう。
【結論】車を「とめる」のはどの漢字を使うのが正しいか?
辞書で「止める」・「停める」・「駐める」の正しい意味がわかりました。
それを踏まえて自動車を駐車場などに「とめる」ときの漢字はどれを使うのが正しいか?という結論がこちらです。
■正式ではないが今は一般的になっている漢字・・・「駐める」
つまり正式な文章では「止める」か「停める」を使うのが望ましいですが、現在の一般的な常識では駐車場に車をとめる際には「駐める」という当て字でも問題はないということになります。
友人・知人とのメールなどのやりとりなら「駐める」でもOKでしょうし、きちんとした文章を書く場合はなるべく「止める・停める」のどちらかを使えば良いでしょう。
「止める」と「停める」のどちらを選ぶか迷ってしまいますが、世間一般では「停める」を使う事が多いようですので、そちらを選んでおけば間違いありません。
というか、これからの常識としては
- 駐車場に車を駐める
- 赤信号で車を止める
- 子供を車に乗せるため停める
このように使い分けると覚えておけば間違いありません。
「留める」は何かを「固定する」がしっくりくる
「とめる」で辞書を引くと「止める」と一緒の項目に「留める」も紹介されています。
しかし同じ意味だからといって、さすがに「車を留める」と書くのは違和感がありますよね?
くわしく見ていくと
・「留める」は何かを「固定」すること
という微妙なニュアンスの違いがあると判明。
たしかに「鳥が木にとまる」を漢字で表す場合は、「鳥が木に留まる」と書くほうがしっくりくる気がします。
もちろん「鳥が木に止まる」でも間違いではないのですが、このあたりの微妙な感覚って日本語独特の難しさですね。
【まとめ】これで迷わない!今後のために再確認
これからは「車をとめておく」なんて文章を書くことがあったら、私は「車を停めておく」と書くようにします。
自転車をとめるときも「停める」が正解です。
また、「足をとめる」ときは「足を止める」ですね。
それに「美しい肖像画に目がとまった」のときは「目が留まった」がいいと思います。
こういう繊細な日本語表現の使い分けが自然にできるとステキですよね。
学生時代には現代文や小論文の勉強をおろそかにし、大人になってからもろくに本を読まずに生きてきた私ですが、最近こういう地味な知識の大切さを実感する毎日です。
【問題】「虫をとる」の漢字はどれが正しい?