少しずつと少しづつ、どっちが正しい?

毎日、メールやLINEなどの文章を書いていると、「少しずつ」・「少しづつ」という言葉を使う場面にときどき出くわします。

私は無意識に「少しずつ」と書いていましたが、あるときふと、それで本当に正しいのかな?と疑問を持つようになってしまって……。

そんなときちょうど小学生の子供のテストで、どちらが正解なのかという問題が出されて、私も一緒に考え込んでしまったんですね。

そこで、くわしく調べたところ、ようやく長年の疑問が解けました!

ここでは、そんな

  • 少しずつ・少しづつは、どっちが正しいか?
  • 少しずつ・少しづつの意味や違い
  • 2つの表記がある理由

などなど、私が「なるほど!」と深くガッテンした正しい事実をご紹介していきますね。

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少しずつ・少しづつ、どっちが正しい?

まず結論から簡潔に説明すると

「少しずつ」・「少しづつ」はどっちも正しい。しかし、原則的には「少しずつ」が推奨される。

これが正真正銘の事実です。

つまり、私たちが普段、作文や手紙などに書くときは、「少しずつ/少しづつ」のどちらで書いても決して間違いではありません。

「づつ」と書いたのを見て、間違いだと指摘する人がいても無視していいんですね。

ただ、どっちが現在の日本でより正しいかといえば、「少しずつ」になるわけです。

日頃から注意して新聞や雑誌、NHKなどのテレビ放送を見ると、100%「ずつ」が使われていることに気づくはず。

子供のテストで出題されたらどう答えればいいか?

子供の国語のテストで、以下のような問題が出題されたとしましょう。

■問い 次のうち、正しい読み方はどちらか?

A.少しずつ
B.少しづつ

この場合、正解は「A.少しずつ 」です。

「B.少しづつ」と解答したら教師からはバツを付けられますし、そのジャッジは日本語の原則的には正しい判断。

小学校や中学校など義務教育はもちろん、外国人に日本語を教える教師の方など教育の現場では「ずつ」と教えるのが正解ですよ。

少しずつ・少しづつの使い分け方

あらためて「少しずつ/少しづつ」はそれぞれどんな場面で使うべきか、使ってもいいのか見分け方を表にしてみます。

「ずつ」・「づつ」のどちらでもいいシーン 「ずつ」を使うべきシーン
私的な文章(ウェブ・メール・LINE等) 子供の教育や日本語教育
  ビジネス上の書類
  公的な書類
  放送や出版物

プライベートな日記や個人的な思いを続くブログなどなら「づく」でも構いません。

しかし、多くの他人の目に触れる「よそいき」の文章には「ずく」を用いましょう。

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少しずつ・少しづつという2つの表記がある理由

では、なぜ「少しずつ・少しづつ」という2つの表記が併存しているのでしょうか?

昔の日本では「づつ」が使われていた

実は、日本の昔の言葉(古語)においては、「づつ」のみが使われていました。

西暦900年前後に書かれた『伊勢物語』には、こんなフレーズがあります。

鳥の子を十づつ十は重ぬとも 思はぬ人をおもふものかは

現代であれば「十ずつ」と書きそうなところを、「十づつ」と書いているのが確認できますね。

そして、それは1946年の終戦直後まで続いていたんですよ。

※こうした昔の日本語の使い方を「歴史的仮名遣い」と言います。(「蝶々」を「てふてふ」、「今日」を「けふ」と書くのもそのひとつ)

戦後に「ずつ」が正しいと決められる

第二次世界大戦後の日本は、アメリカ(GHQ)の強い影響化にありました。

日本のそれまでの古風な慣習を改めようと、様々な指図が出されたんですが、そのひとつが「日本語」について。

日本語は世界でも難しい言語のひとつと言われ、やり玉に上げられたのが同じ意味なのに複数可能になる表記の方法でした。

そこで歴史的仮名遣いを捨て去り「現代仮名遣い」へと移行を迫られ、「づつ」は「ずつ」へと統一されたわけです。

※GHQには「言語簡略化担当官」なる役職もあったそうで、いかに徹底していたかが想像できます。

現代仮名遣いが改訂されて「ずつ/づつ」の両方が認められる

そんなわけで1946年からは、「ずつ」のみが正解とされてきました。

しかし、歴史的仮名遣いを誤りとするのは日本古来の価値ある文学や高齢の方の言葉遣いまでを否定する行為です。

それを正そうと、1986年になって改めて日本人の手だけで現代仮名遣いを改訂することになったんですね。

その際に、以下のような原則が書き加えられました。

なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。

例 せかいじゅう(世界中)
  いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく
  うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく
  あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく
  うでずく くろずくめ ひとりずつ
  ゆうずう(融通)

  
■引用:文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 現代仮名遣い | 本文 第2(表記の慣習による特例)

上記で挙げられた例のひとつに「ひとりずつ」があるのを見つけられたでしょうか?

これも「少しずつ」と同じ「ずつ」の使い方ですから、「少しずつ」においても「ずつ」と書くのが本則(原則)でありながら、「づつ」と書くことも可能だと解釈できますね。

※本来の日本語を取り戻すまでに、終戦から40年もかかったというのは悲しくもあり、感慨深いものがあります。

「ずつ」と「づつ」の変遷まとめ

  • 古代~1946年⇒「づつ」のみが正しい
  • 1946年~1986年⇒「ずつ」のみが正しい
  • 1986年~現在⇒「ずつ」と「づつ」どちらも正しい

少しずつ・少しづつの意味や違い

そもそも少しずつの「ずつ/づつ」はどんな意味があるのでしょうか?

「づつ」で辞書を引くと何も見つからず、「ずつ」で引くとこのように解説されていました。

やはり辞書的にも「ずつ」が正しいとされ、書き方が違うだけで意味もどちらも同じなんですね。

ずつ〔づつ〕 の解説
[副助]数量・割合を表す名詞・副詞、および一部の助詞に付く。

1 ある数量を等分に割り当てる意を表す。「一人に二本ずつ与える」「五〇人ずつのクラス編成」

2 一定量に限って繰り返す意を表す。「一ページずつめくる」「少しずつ進む」

[補説]「一つ」「二つ」の「つ」を重ねたものか。中古から用いられる。

■引用:ずつの意味 – goo国語辞書

つまり、誰に(どれに)いくつ割り当てるか、または、何かを区切って繰り返すという意味で使われます。

「ずつ/づつ」の語源

日本語で物を数えるときは、

ひとつ・ふたつ・みっつ

と語尾に「つ」が付きますが、これが2つ重なって「つつ」になり、それがやがて「づつ」に変化したと言われています。

言いやすかったからとか、そんな理由からなんでしょう。

たしかに「ひとつつつ」・「ふたつつつ」だと言いにくいですから(笑)

この語源からも分かるようにオリジナルは「づつ」であり、「ずつ」は同じ音だから使われるようになっただけなんですね。

「ずつ/づつ」は漢字で書ける

「ずつ/づつ」は漢字で書く方法もあります。

それが「宛」です。○○宛など「あて」と読む漢字ですね。

「少し宛」と書けば、「すこしずつ/すこしづつ」と読めます。

しかし、読める人は少なく、使う人も少ないので、ひらがなで書くのが無難でしょう。

「少しずつ・少しづつ」を使った例文

ここまでを踏まえて最後に「少しずつ・少しづつ」を使った例文をいくつかご紹介します。

  • 頂いたチョコは貴重なので、少しずつ(少しづつ)食べていこう。
  • 席が近すぎるので、あと少しずつ(あと少しづつ)離してください。
  • 毎日少しずつ(少しづつ)読み進めて、ようやく最終章にたどり着いた
  • 入荷が少ないので、少しづつ(少しづつ)しか分けられません。
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まとめ

少しずつ・少しづつはどっちが正しいのか、言葉の歴史を紐解いて解説してきました。

要点をまとめると

  • 原則的には「少しずつ」が正しく、教育・ビジネス・公的文書はこれを使う
  • 「少しづつ」は昔の仮名遣いで間違いではなく、私的な文章なら使ってもいい

学校教育では「ずつ」が正しいと教えられるので、「づつ」は完全な誤りだと信じている人が少なくありません。

しかし、平安時代まで歴史を遡ると、もともとは「づつ」が正しかったと分かります。

とはいえ、そんなことを言っても世間一般の思い込みやルールは強固なので、なるべくなら普段から「少しずつ」に一本化したほうがいいでしょうね。

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